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豊島二冠が3連勝 悲願の名人獲得にあと1勝

本日は有給休暇で1日のんびりと過ごすことができました。
昨日の夜から、トランプ大統領の対中国関税引き上げ表明による米国株の乱高下とそれにつられる形で日経平均株価2日連続の続落、欧州CLリバプールの奇跡的な逆転劇と刺激的なニュースが続きました。
そして刺激的なニュースの締めくくりが第77期名人戦第3局の佐藤天彦名人対豊島将之二冠の一戦でした。

ここまで2局行われ、豊島二冠が連勝して迎えた第3局。
戦型は第1局の千日手局、第2局に続く角換わり腰掛銀となりました。
佐藤名人としては過去2局の指し回しに精彩がなかったので、別の戦型に誘導することを考えられたと思うのですが、自身と相手の得意戦法や棋風の相性を考慮した上でこの戦型を選択されたと推察されます。
序盤は比較的早く手が進み、角換わり腰掛銀の最新型。

上図から▲4五歩△5二玉▲4四歩△同飛▲4七歩△4一飛▲8八玉△7二金▲3八金△6二玉▲4六歩△6三金と展開します。
途中、▲4六歩と指した手に対しウッカリ△同飛と歩を取ってしまうと▲4五桂と飛車の退路を絶たれてしまうので要注意。(▲4五桂に△同銀は▲4七金で飛車捕獲)
本譜は▲9八香として穴熊を目指しました。
穴熊といっても7八金と7七銀しか守り駒がないので、穴熊本来の堅さを求めた手ではなく戦場から玉を一路遠ざけるための穴熊です。

ここから△8一飛▲4八金と進み、後手は△4四銀としました。
ここまで後手は隙を見せない手待ちをしていましたが、▲9八香を見て攻撃に切り替えました。
△4四銀以下 ▲2四歩△同歩▲同飛△2三歩▲2九飛と進行。

ここで後手は△8六歩と突き捨て。
▲同歩は△8五歩と突ぎ歩をされ、以下▲同歩は△9五歩~△8五桂~△9七歩と攻められ、▲9八香と指した手が逆用される形になります。
本譜は▲同銀としますが、ここで△2二角と打った手が決断の1手。

遠く8八玉に狙いを定めた手ですが、本来は敵陣に打ち込みたい持ち駒の角を自陣に手放すため、この角が空転すると大きく形勢を損ないますので本局の命運を賭けた1手です。
わずかな考慮時間で指されているので事前にこの局面を研究されていたと思われます。
△2二角の局面で成立するか微妙ですが、▲9五歩と端に手を付ける手があったかもしれません。
普通に△同歩と応じると▲9三歩~▲9五銀と端から逆襲。
△8五歩▲7七銀の交換を入れてから、△9五歩としても▲9四歩△同香▲9三歩。
放っておくと▲9二歩成とされ、玉や飛の近い位置にと金が出来ますので、歩成を防がなければなりませんが、△9一飛は▲8二角~▲9二歩成、△8二飛は▲9一角△7二飛▲4五銀とされ銀を入手した後に▲8三銀が残ります。
このような展開になると△2二角を空振りできるので一見先手が良さそうですが、▲9五歩を手抜きするなど後手は途中で変化することが可能なので一筋縄ではいきません。
先手としては1日目でこの展開に持ち込むことは心理的に難しかったと思われます。
先手が▲4五歩としたところで封じ手となり1日目終了。

2日目。封じ手は△5五銀左。
△2二角からの継続手で角の効きを活かすためにも当然の一手。
以下、▲同銀△同角と進み、先手は▲4四角と切り返して後手の角を盤上から消しにかかります。
ここから△6五歩▲5六銀△6六角▲7七銀△4四角▲同歩△4二歩と進みます。

途中、互いに角を簡単に取らないところが勉強になると思います。
単純に▲6六角と取ってしまうと手順に同歩と進軍されます。
▲5六銀や▲7七銀と角に当てて催促し、後手に4四角と取らせることで先手は玉を固めつつ4四に歩を伸ばすことができました。
上級者の方の将棋を観戦していると、薄かった自陣がいつの間にか固くなっていることがあると思います。
ここではそのテクニックが使われていました。
先手の形勢が良い訳ではないのですが、部分的には勉強になる指し回しでした。
本譜は▲4六角△6四銀▲7九玉と進行。

先手の▲7九玉はわざわざ囲いから出た手で理解しづらいかもしれませんが、放っておくと△8五桂~△6六角と再び角のラインで玉を攻められますので早逃げした手となっています。
ここで後手は△5五角と指しましたが、少し攻め急いだ感があり形勢は五分に戻りました。
じっくり△3三角と打ち、△4四角~△5五銀を見せておけば有利を維持できていました。
本譜は△5五角 以下▲同角△同銀右▲同銀△同銀▲4五角と進みました。
▲4五角は▲3四角からの右辺からの攻めを目指すというより、△5五銀が動いた時に▲6四歩として6三金・8一飛を狙うと同時に6七の地点も守りに利かす左辺を狙った攻防の1手です。

ここで△5四歩と角道を遮りましたが、中途半端な手で少しポイントを失いました。
攻めるなら△8五桂、守るなら△5四銀か△6四銀打の方が本譜より優れていました。
ここ数手の応酬は佐藤名人らしい柔軟な対応で、細かくポイントを積み重ねて先手が盛り返しました。
△5四歩に対して先手は▲7五歩。
狙いは△同歩▲7四歩△同金▲5四角と進め、8一飛と3二金に照準を当てて攻める狙いです。
こうなると△5四歩と指した手が悪手になりますので、後手は手抜きで△8八歩と切り返しました。

相居飛車戦で頻出する手筋で先手は難しい対応を迫られました。
▲同銀・▲同金は壁形の悪形になり、▲同玉は玉が上部に引き出され攻撃の的になります。
本譜は▲同銀と応じましたが、後手は壁銀にさせたところで△4七銀と反対側から攻撃。

ここで佐藤名人が意表を突く勝負手を放ちます。
▲同金!△3八角▲4八金△2九角成▲7四歩。
角換わり戦でよく現れる手筋の△4七銀に対して自然な手としては▲4九金ですが、それには△6六歩▲7四歩△6五桂や△4六角▲7四歩△8五桂と進めら7筋の攻撃が空転します。
先手陣は壁形となっており強い戦いに持ち込みづらい戦況ですが、△4七銀に対して▲同金とした手が常識にとらわれない強手でした。
後手は狙い通り△3八角から飛車を入手しますが、▲7四歩と取り込み怪しく後手玉に迫ります。
普通は桂取りを避けるため△8五桂と逃げる手が第一感ですが、それは▲7三銀と絡まれ△同金は清算して▲5四角、また▲7三銀に△5三玉は▲3四角とした手が▲4五桂△4四玉▲3五銀の詰めろとなり後手は形勢を損ねます。
後手が困ったようですが、ここで△6六歩とした手が6七に駒を打ち込む拠点を作りつつ2九馬の働きを高める好手でした。

△6六歩の圧力に押されたのか佐藤名人の指し手が乱れます。
▲7三歩成△同玉と桂馬を入手した後、▲3四角としましたが、ここは何はともあれ▲7七銀と壁銀を解消すべきでした。
本譜は▲3四角△2八飛▲5九銀△6二玉と進行。
△2八飛で先手に銀を使わせてから△6二玉と手を戻した手が冷静な一手でした。

このまま後手が有利を拡大していくかと思われましたが・・・
上図から
▲5二銀△5三金▲6三歩△7三玉▲7七桂△4四金▲6二歩成!

角取りを放置して歩を成った手が凄まじい勝負手でした。
△同玉は▲6四歩△同銀▲6三歩△7三玉▲5六角と指す狙いですが、と金を放置して△3四金と角を取られて攻めが繋がるのか?
本譜は上図から
△3四金▲6三銀成△8四玉▲7二と△6七歩成▲同金△6六歩▲6八金

ここで後手は△3一飛と飛車が狙われにくい位置に逃げました。
一見自然な手に見えましたが、この手が疑問手となり遂に逆転しました。
△3一飛のところ△8三飛として▲7三と△同飛▲同成銀△同玉と成駒を消しておけば後手は微差ながら有利を維持できていました。
しかし、上図の局面では先手の攻め駒は①7二と②6三成銀③7七桂④持ち駒の桂馬の4つだけで攻めが切れかかっているため、後手は飛車を渡す上記の手順を選択することは難しかったと思います。
この局面にもってきた佐藤名人の勝負術が素晴らしかったです。
本譜は上図から▲7六歩△7五歩▲8六歩△7四馬と進みました。

△7四馬のところで△7六歩と歩を取り込むのは▲8五歩とされ①△7四玉は▲7三と△7五玉▲8七桂△8六玉▲9七銀△8七玉▲7八金△9八玉▲8八金△9九玉▲8九金で詰み、▲8五歩に対して②9三玉には▲9五歩と指され△同歩は▲9四歩△同玉▲8六桂△9三玉▲9五香で詰まされます。
いずれの手順も桂馬が良く効いています。
本譜は上図から▲7三と△同馬▲同成銀△同玉▲6五桂打△8三玉▲5二角△6七銀と進行。

先手の粘りが実を結び、ここでは先手がはっきり優勢となりました。
▲3四角成としておけば6七の地点に馬の効きがありますので、本譜のように△4八飛成とする手がありませんでした。
後手は単に△6八銀成とするくらいしかありませんが▲同銀△4八飛成▲7三金△9三玉▲6九歩△5八金▲7八馬で後手は指しようがありませんでした。
後手は守り駒がないため1枚でも駒を渡すと詰まされる状態になっているのが泣き所です。
勝負あったかに思われましたが・・・
先手の指し手は▲8五桂・・・これが敗着となりました。

△4八飛成とされ先手玉は必死。対して後手玉に詰みは無し。
おそらく△4八飛成に同銀として先手玉に詰みは無いと錯覚されたように見受けられます。
なぜこのような簡単なミスを・・・と思われるかもしれませんが、1日目から2日目の夕方まで最強の挑戦者の攻めに耐え続けていたので相当心労があったものと推察されます。
最後は読み抜けで急転直下の終局となりましたが、豊島二冠の冷静な指し回しと劣勢の局面を乗り切った佐藤名人の勝負術が光った名局でした。
名人側から見ると、今シリーズは横歩取り・角換わり・力戦型と指し方を変えましたが、全局劣勢に陥っていて光明が見えてこない状況での3連敗。
勝敗以上に内容面で非常に厳しい結果となりました。
豊島二冠の名人奪取の可能性が高くなりましたが、佐藤名人の巻き返しにも期待したいと思います。

以上、最後までお読みいただき有難うございました。

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会社での出世を目指し、毎日奔走しながら働く地方住まいのサラリーマン。仕事のことから趣味の将棋のことまで気まぐれに書いています。

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