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豊島名人 竜王戦決勝トーナメント進出!

5月20日(月)に第32期竜王戦1組4位出場者決定戦 ▲稲葉陽八段vs△豊島将之名人の対局が行われました。

本局は稲葉八段の先手で角換わりの出だしとなりました。
図は5筋で銀交換が行われ、▲6七角と引いたところです。

互角の序盤でここからの駒組みでいかにポイントを重ねていくかが焦点になりますが、稲葉八段の指し回しが巧みでした。
第1図より△5三金▲4六銀△4三金寄▲5五銀△4二玉▲1五歩△7五歩▲同歩△3一玉▲9六歩△6四歩▲7六角△6五歩▲同歩(第2図)
後手は△5三金として手薄になった5筋に駒を寄せますが▲4六銀とした手がポイントを稼ぎに行った積極的な一手。
▲3五歩から飛角銀を集中させる2筋突破と▲5五銀と歩をかすめ取る手を狙った手です。
後手は△4三金寄として5五歩を見捨てて右辺の安定を優先させましたが、後の展開を見ると△5四金として▲3五歩には△4三銀と打ち専守防衛を図った方が良かったかもしれません。
先手は角・銀を手放して1歩を取っただけですので、あまり戦果が上がっていないように見えますが、この後の駒組みにおける先手の大局観が素晴らしかったです。
後手は先手からの攻めがなくなったことを確認し△4二玉から囲い整備していきます。
▲1五歩が大きい手で先手にだけ端攻めの権利ができました。
ここで後手は△7五歩と突き捨てを入れ飛車の横効きを通してから△3一玉として入城を目指しました。
後手は飛車の効きを広げて守りやすくするために△7五歩としましたが、これが疑問手で後手に的確に咎められることになりました。
△6四歩と指した手を見て、▲7六角が上手いタイミング。
飛車の横効きが止まっているので次に▲5四銀から突進されるため後手は△6五歩として飛車の横効きを復活させましたが、冷静に▲同歩とされると先手からの攻めは止まりましたが後手から攻める手も無くなりました。
先手はバランスを保った陣形で▲5五銀が後手の駒の前進を止めており、ここではハッキリ先手の作戦勝ちになっています。
先手に▲5五銀~▲1五歩と駒を前進させて攻撃態勢を見せられたため後手は守備の構築を急ぎましたが、守備を優先するあまり反撃体制に手が回らず、結果大きく立ち遅れる形になりました。
第2図で△5四金から攻めようとしても▲同銀△同飛▲6四金で攻め駒の桂を取られながら抑え込まれるため、後手から動くことはできなくなっています。

第2図より△2二玉▲4八玉△5三金▲2九飛△4三角▲6九飛△5二金▲4六歩△4二金右▲4七金△1二香▲6六飛△1一玉▲5六歩(第3図)
後手作戦負けですが、まだ負けが確定したわけではありません。
後手側の考え方としては、こういった局面ではいかに差を広げさせずに、ぴったり背後に付けるかが重要になります。
攻めることができない後手にできることは何か?
自陣を少しでも固くして耐久力を上げ、先手が攻めてきた時にカウンター攻撃を出せる準備をしておくことです。
その方針に沿って、後手は△4三角と打ち先手の攻めを牽制しつつ穴熊に組みます。
専守防衛に徹されると先手もむやみに攻め込むわけにはいかないので慎重に攻撃態勢を整えていきますが、途中の▲6六飛が疑問手でした。
この手は攻守において中途半端な位置で、逆に後手からの攻撃対象になりました。

第3図より△3五歩!▲同歩△5四銀▲6九飛△6五桂▲5四銀△同角▲6五角△6四飛▲6六銀△6五飛▲同銀△2七角成▲3六銀△2八馬▲5七玉△3八銀▲4八金△3九角(第4図)
△3五歩~△5四銀が機敏な仕掛け。
△5四銀に▲同銀は△同角で次に△2七角成とする手があります。
▲6六飛と浮いていなければ△5四銀に対して▲6六銀と引いて後手の攻めをかわすことができました。
本譜は後手陣が圧死寸前から一気に息を吹き返しました。
第4図まで進むと玉形の差が歴然なため先手は相当勝ちにくくなっています。
それ以上に、作戦勝ちをふいにした先手の心理状態と作戦負けから一気に勝負形になった後手の心理状態を察するに実戦的には後手優位な状況になっています。
その心理状態の乱れが盤上に表れ始めます。

第4図より▲6一飛△6四歩▲同銀△3七馬▲3九飛△4八馬▲同玉△3九銀不成▲5七玉△6九飛▲6八歩△8九飛成▲7七金△7九竜▲6七金△7六金(第5図)
ここで指した▲6一飛が悪手で逆転しました。
振り飛車対居飛車穴熊の戦いでも頻出しますが、穴熊戦において王手がかからない状況は避けなければなりません。
ここでは▲3四歩△同銀▲1四歩△同歩▲同香△同香▲1三歩と端に手を付け少しでも王手がかかる状況にしておく必要がありました。
本譜の展開になると後手は自陣を気にせず攻め続ける形になるので非常に戦いやすい状況になっています。
後手は攻めが続けばいいので△6九飛~△8九飛成と駒を回収しつつゆっくり攻めていきます。
第5図の局面は最後の希望であった上部脱出を絶たれ先手の負け筋に入っています。

以下は穴熊の堅陣を生かした着実な攻めで後手の勝ちとなりました。

投了図の通り、先手の攻め駒は後手玉に触れることなく終局しています。
前述の通り、対穴熊においては少しでも弱体化させて王手がかかる形にしておかなければ一方的な展開になります。
受け切る、もしくは指し切りにもっていくしか勝つ術がありません。
これは至難の業で、同レベルの戦いにおいては穴熊側が非常に勝ちやすいです。
片方はどこか一つ守りをこじ開ければよくて、片方は守りが一つでも決壊すれば負ける状況・・・どちらが勝ちやすいかは火を見るよりも明らかです。

本局は序盤戦で先手が圧力をかけて後手の駒組みを制限した指し回しが巧みでした。
また、そこからの後手の駒組みも実戦的な進め方で非常に参考になる勝負術でした。
現在トップに君臨する豊島名人が決勝トーナメントに進出されたことで竜王戦が非常に楽しみになりました。
決勝トーナメントでの名勝負を期待したいと思います。

以上、最後までお読みいただき有難うございました。


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habuparov
会社での出世を目指し、毎日奔走しながら働く地方住まいのサラリーマン。仕事のことから趣味の将棋のことまで気まぐれに書いています。

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