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羽生九段 王座戦トーナメント ベスト8進出!

5月20日(月)に第67期王座戦挑決トーナメント1回戦 ▲近藤誠也六段vs△羽生善治九段の対局が行われました。

本局は後手の羽生九段の誘導で1手損角換わりから右玉の戦型となりました。
図は先手が3筋の歩交換を行い、4六銀と引いたところです。
ここからの手順が右玉らしい変幻自在な指し回しでした。

△3一飛!▲5六角△2二金!▲3五歩(第2図)

△3一飛が右玉らしい飛車の旋回。
放っておくと△4四銀~△2二金の要領で3筋から逆襲されます。
先手は3筋破られないように▲5六角として後手の攻めを牽制します。
この角は右玉崩しで頻出する自陣角で△3三銀が動けば▲2四歩~▲同飛からの2筋突破、ゆっくりした展開になると▲7五歩~①▲7四歩②▲9五歩~▲9二歩の筋で桂香を取りに行きます。
後手は△2二金として次に△4四銀を見せます。
この局面では、先手から2筋を攻めることができず、また▲7五歩△同歩▲7四歩とすると△8五桂▲6八銀△4四銀となり3筋を受けることができなくなります。
上記の反撃があるため、先手は▲3五歩として先受けします。

本譜は第2図から△1五歩▲7五歩△同歩▲8六銀△7六歩▲7五銀△4四銀▲2四歩△同歩▲同飛△2三歩(第3図)

△1五歩は間合いを図った手。
ここは指し手の難しいところです。
後手はこれ以上、自陣を固める手やバランスを保つ手がありません。
後の展開を見ると△5四歩として△5五歩を狙って間合いを図っておいた方が良かったかもしれません。
本譜は先手が▲7五歩から玉頭戦に持ち込み、5六角が威張れる展開になったので先手がペースを握った感があります。
△4四銀が強気な一手。手薄になった2筋を攻められるので危険なように見えますが・・・

第3図から▲2三同角成△3五銀!▲同銀△同飛▲2二馬△3九飛成▲5九銀△4八銀▲6九金△5九銀成▲同金引△7七銀▲2三馬△2二歩▲6七馬△3三角▲3四飛△7八銀不成▲同馬△2九竜(第4図)

▲2三同角成の瞬間に△3五銀が強手。
▲2二馬は△2四銀▲3一馬で一時的に金得となりますが、△3九飛が王手馬取りで△3一飛成と馬と取られた局面は先手に攻める手がなくなりますので本譜が最善の進行になります。
ギリギリの間合いを保って斬り合っていますが、お互いに致命傷を避けています。
非常に見応えのある攻防です。
途中、先手が▲2三馬~▲6七馬と自陣に引きつけたのが習いある手順。
先手は攻防の中で金を得しており、桂・香車も取れる展開が見込めます。
このような駒得の展開になった場合、ゆっくりした展開に持ち込むと駒の損得差が明確になり形勢が分かりやすくになります。
逆に一手を争うような早い展開になった場合は駒の損得差が生きません。
後手としては駒損を補うために△7七銀から急襲しますが、先手は駒得を生かすために▲2三馬から長期戦に持ち込もうとしています。
第4図まで一気に進みましたが、紙一重の攻防でほぼ互角の形勢になっています。

本譜はここから▲7四銀打△2五竜▲3五歩△2八竜▲6八金右△7七桂▲同桂△同歩成▲同馬△8五桂打▲8八馬△7八歩(第5図)

△2五竜 ▲3五歩の交換を入れてから△2八竜が細かい利かし。
単に△2八竜は▲3八歩と遮断されます。
先手は後手の攻めを丁寧に面倒を見ていましたが△7七歩成の応手を誤りました。
本譜は▲同馬と応じましたが△8五桂打から先手先手で攻め続けられることになりました。
▲同金と応じ、同じように△8五桂打から攻められた場合は手抜きして▲5五桂!△同角▲3二飛成から攻め込む順で優位を維持できていました。

本譜は第5図から▲同馬△7七歩▲4五馬△7四銀▲同銀△5四銀(第6図)

後手の攻めが続いておりましたが、一転△5四銀打と守りに回りました。
これが負ければ敗着の一手でした。
△7八銀と打ち▲同金上△同歩成▲同馬△1九竜▲6九桂△7六香といった展開であれば互角の形勢でした。
羽生九段は△7八銀から攻める順は当然見えていたと思いますが、ここで攻めから一転して受けに切り替えた手順は長年の経験や勘に基づいた勝負術なのだと感じました。
実際に近藤六段は意表を突かれ、対応を誤りました。

第6図から▲6三銀打△同銀▲3三飛成△同桂▲6三銀成△同金▲同馬△同玉▲4一角△5二銀▲7五桂△5四玉▲5五銀△同玉(投了図)まで後手勝ち。

▲6三銀打が痛恨の敗着。
この手を指してしまうと後手に駒を渡すので、先手は受けが効かなくなるため攻め続けるしかありません。
しかし、あと一枚駒が不足しているので後手玉に詰みはありません。
▲6三銀打に代えて▲5五桂が正着でした。
△4五銀と馬と取られる手が気になりますが、それには▲6三銀打△5一玉▲5二銀打△4二玉▲4三桂成△3一玉▲4一銀成!△同玉▲5二銀成△3一玉▲4二成銀で詰みとなります。
▲5五桂に対しては△同角は▲3二飛成△5二桂▲2一竜で一手一手の寄り。
後手は6三の地点を受けなければいけないので一番粘る手は△5二金ですが、
唯一の持ち駒が無くなるので▲1八馬と竜に当て、▲8一銀からゆっくり攻めれば優勢でした。

羽生九段は本局のような攻めから急に受けに回るなどのリズムを変えるテクニックが非常にうまく勉強になります。
機械ではできない勝負術で人はこのように意表を突かれると、とっさに正しい判断を下すことが難しいです。
特に本局のように限られた時間の中で正着を選択することは不可能に近いです。
羽生九段の記録係を取らせていただいたことがありますが、羽生九段は対局中いろいろなところを見ておられました。
おそらく盤上以外に対局者のしぐさも無意識の内に見ている事もあると思います。
通算2000局以上の対局を経て数々の死線を潜り抜けて得た経験から、相手の心理状態を把握し今回の不利な状況を打破するには△5四銀が一番可能性が高いと判断されたように私は感じました。

本局は序盤の駆け引き、中盤のギリギリの攻防、猛攻を続けて急に受けに回った終盤の勝負術がとても勉強になる一番でした。

以上、最後までお読みいただき有難うございました。


瞬間を生きる [ 羽生 善治 ]

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habuparov
会社での出世を目指し、毎日奔走しながら働く地方住まいのサラリーマン。仕事のことから趣味の将棋のことまで気まぐれに書いています。

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