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《棋聖戦》豊島棋聖先勝 期待にたがわぬ大熱戦

6月4日(火)に第90期棋聖戦五番勝負 第1局 ▲渡辺明二冠vs△豊島将之棋聖(三冠)の対局が行われました。

今期無敗でここまで来た2人。
まさに天下分け目の一戦となった本局は振駒の結果、渡辺明二冠の先手となりました。
戦型は力戦模様の矢倉となりました。

第1図以下の指し手
△5五歩▲7五歩!△6五桂▲7四歩△7二飛▲5五歩△7四飛▲5四歩△5六歩(第2図)

角を引いたことで中央の勢力関係が変わったので後手は△5五歩から動きます。
そこで指した▲7五歩!が自玉の頭から動くもの凄い反撃。
先手は▲5五歩~▲5四歩と歩を伸ばしましたが、対する後手は△7二飛~△7四飛で手順に飛車が先手玉に狙いを付ける形になりました。
後手は飛車が働き、さらに先手玉の弱点である玉頭が空いている状態なので、私の所感では後手の調子が良さそうに見えました・・・
しかし、この数手の応酬で先手が微差ながらリードを奪った模様です。
駒の損得は無し、守りの堅さはほぼ互角(先手の玉頭が空いている分、若干後手に分がありそう)、駒の働きは金銀は似た配置ですが飛車角が玉頭に利いているので後手の方が良さそう、以上の点から理論的には後手に分がありそうな気がしますが・・・
先手がリードしている理屈が分からないですね・・・
常識に捉われず、これで十分戦えると見た渡辺二冠の大局観が素晴らしすぎます。

第2図以下の指し手
▲7七歩△5七歩成▲同銀右△同桂成▲同角△5六銀▲2四歩△同歩▲同角△2三歩▲4二角成△同玉(第3図)

▲7七歩がしっかりした受け。
玉頭の傷を消すことで先手陣が一気に固くなりました。
△5七歩成から銀桂交換になりましたが、こう進んでみると銀を入手しても使い道がなく、また後手の歩切れが大きく先手の有利が顕在化してきました。
△5六銀は角取りを狙った手というよりは、△4七銀成の歩切れ解消と先手の攻め駒を狙うことが目的です。
ここで先手が▲2四歩から角金交換をしたのが好手順。
先手は角が残っていると△5六銀にいじめられる展開になるので、この局面では相手の守りの金と交換してしまった方が攻めやすくなります。
ここまで先手が好調に進めていましたが第3図の局面から先手に疑問手が出ました。

第3図以下の指し手
▲4六金△6五銀引▲同銀△同銀▲5八飛(第4図)

▲4六金は銀取りの手ですが、後手の△1三角の王手も未然に防いでる一石二鳥の1手。
しかし、ここではもっと良い手がありました。
▲4六桂としておけば先手は明確な有利になっていました。
この手も未然に△1三角の王手を防いでいるのですが、後手は次の▲3四桂が非常に受けにくくなっており先手有利の展開が見込めました。
本譜は▲4六金に△6五銀引として銀交換をした後、▲2六桂や▲5三銀打としておけば微差ながら先手指しやすかったのですが、▲5八飛が疑問手で一気に差が縮まりました。
中央突破を狙って一見良さそうな手ですが、次の手が▲5八飛を咎めた好手でした。

第4図以下の指し手
△4九銀▲5九飛△4八角▲2六桂△3七角成▲3四桂△3三玉▲2二桂成△同玉▲4九飛△5七桂(第5図)

△4九銀が意表を突いた1手。
▲5九飛で攻めが空振りする感じがして非常に指しにくい手ですが、第4図の局面では△4九銀が急所を突いた1手でした。
△4九銀▲5九飛に対する△4八角が3手1組の好手順で、先手有利だった将棋がこの手を境に混戦模様となりました。
▲2六桂には△3七角成として2二角を見切るのが好着想。
角と桂の交換で通常は先手が良くなるハズですが、今回の場合は2二角が遊び駒になっていた事と危険地帯にいた4二玉を手順に2二の安全地帯に持って行けるメリットの方が大きく、本譜の手順で後手が息を吹き返しました。
▲4九飛と銀をボロッと取られますが△5七桂で取り返せます。
先手は▲5八飛と回って攻めるハズが逆に飛車を目標にされ、結果として飛車が攻撃参加できなくなったことが非常に痛いです。

第5図以下の指し手
▲2九飛△6九桂成▲同飛△3三金打▲2四歩△同歩▲5三歩成△8六歩▲同歩△8七歩▲4一銀△5三銀▲4五桂△3一金▲3三桂成△同桂▲2三歩△同玉▲5二角(第6図)

ここからの応酬は最善が分からない、とても難解な局面でした。
後手は金を取り返した後、▲3四桂を防ぐため△3三金打とがっちりガードしました。
ここでは△3三金打に代えて△3四桂としておく手もありました。
△3三金打は後手陣が一気に堅くなり強い戦いができるようになったのですが、攻め駒を1枚守りに使い戦力が不足したことと貴重な手番を先手に渡したデメリットがあります。
△3四桂であれば▲3四桂を防ぐと同時に4六金を取って上部が開けて後手玉が安全になる展開が見込めました。
どちらの手を選択しても形勢は互角で、ここは対局者の棋風が出るところですね。
局面が難解すぎて非常に判断に迷うところでした。
攻守が目まぐるしく変わる展開が続き▲5二角と迫った第6図、ここからの応酬が本局のターニングポイントになりました。

第6図以下の指し手
△5七歩▲5九歩△5四飛▲2五歩△5八歩成▲2四歩△同飛▲5八歩△3四歩▲4三角成△4一金▲6五馬△8八銀▲同金△同歩成▲同玉(第7図)

5八歩が無ければ△2八飛成と王手で攻めることができた

△5七歩が危険な1手。
▲2九飛と回られ、次に▲3五金と上部から攻められると寄り形になっていました。
後手は手駒が少ないため△5八歩成としても詰めろにならないので、どこかで受けに回らないといけないのですが、先手には▲4三角成として▲3四銀から寄せる手と6五銀を取る両狙いの手があり、後手が攻めを振りほどくのは非常に困難でした。
しかし、本譜は豊島三冠の気迫が上回ったのか渡辺二冠が▲5九歩と受けたため、また五分の形勢に戻りました。
△5七歩▲5九歩の交換は先手の飛車が使えなくなった分、後手がかなり得をしました。
ここで後手は△4二銀と守りを固めていれば互角の形勢を維持できましたが、△5四飛としたのがマズく形勢を損ねました。
▲2五歩と上部に手を付けたのが厳しい1手。
後手は△5八歩成と攻めようとしますが、▲2四歩とされると△同飛と取るよりなく、そこで▲5八歩と手を戻されると、先手玉に迫る手がなくなった上に▲5八歩が後手の横からの攻めに対して壁の役目を果たすことになりました。
ここで先手が一歩抜け出すことに成功しました。
▲4三角成~▲6五馬で先手玉の上部脱出を押さえる駒を取り除けたため、先手はかなり負けにくい態勢になりました。

第7図以下の指し手
△8七歩▲同玉△4六馬▲同歩△6四銀▲3五銀△同歩▲2五歩△同桂▲4五角△3四銀(第8図)

後手は 上部を押さえている4六金を取り△6四銀としましたが、ここでは先手が優勢から勝勢に差し掛かっています。
▲3五銀に△6五銀と馬を取るのは▲2四銀△同玉▲2九飛△2五銀▲5三角の詰めろ逃れの詰めろで先手勝ち。
▲2五歩に対して△6五銀も上記と同じ手順で先手勝ち。
よって後手は取る1手となっています。
ここで先手は▲5六馬と王手で引いて合駒を強要させ、▲7六銀として△7五桂からの頓死筋を消しておけば勝勢でした。
本譜は▲4五角としたため△3四銀と当てられて、どちらかの角を取られる形になり形勢が逆転しました。
最近の渡辺二冠は優勢の局面から勝ちを逃すケースがほとんどなく、本局もこのまま押し切るものと思えましたが、まさかの失速でした。

第8図以下の指し手
▲3四同角△同飛▲4三銀△6五銀▲3四銀成△同玉▲4五銀△3三玉▲4四銀打△2二玉▲7二飛△3二角▲3三金△1三玉▲3二金△同金(第9図)

凄まじい死闘になりました。
▲3四同角から詰めろと王手の連続で迫りますが、後手が最善手で応じます。
▲7二飛で王手をしながら△7五桂の詰み筋を防げましたが、駒を使い過ぎたため後手玉に迫る手段が難しくなりました。
先手玉は飛車が7筋からいなくなると△7五桂からの詰み筋が発生するので、それを考慮した寄せが必要になります。
先手にとっては第9図の局面が最後のチャンスでした。

第9図以下の指し手
▲1五歩△同歩▲1四歩△同玉▲1六歩△同歩▲1五歩△同玉▲3五銀△1七歩成▲3八角△4三角▲1六歩△1四玉▲3四銀左△7四歩(第10図)

▲1五歩から端に手を付け、後手玉を1五まで持ってきたのがマズく後手玉に詰めろで迫ることができなくなりました。
▲1五歩△同歩に▲3三銀不成としておけば十分逆転が狙えました。
▲3三銀不成に△同金は▲2二角△1四玉▲3三角成で先手勝ち。
銀を取ることができないので後手は△4二金打!と受けますが▲3二銀成△同金▲5三角としておけば▲3五角成からの攻めと、角が7五の地点に利いているので7二の飛車を動かすことができます。
先程まで飛車を7筋から動かすことができないため、攻め筋が限られていましたが▲5三角とすることで先手の攻め筋がかなり広がります。
本譜の手順は先手の攻め筋が限られているので、後手としても読みやすく受けやすい状況になっていました。
▲3三銀不成~▲5三角の手順で攻め筋を広げていれば、秒読みの後手は読み切ることが困難で勝敗もどう転んでいたか分かりませんでした。
△7四歩で飛車筋を止められ大勢決しました。
先手は△7五桂からの詰み筋を防ぐ有効な受けがありません。

第10図以下の指し手
▲4三銀不成△7五桂▲7八玉△8七銀▲6八玉△6七桂成▲同玉△6六金まで後手・豊島棋聖の勝ち

投了図以下 ▲6八玉△7八金打▲5九玉△6九金で①▲同玉は△7九飛▲同玉△7八金まで、②▲4九玉は△5九飛▲4八玉△3七金まで、③▲4八玉は△3七金▲4九玉△5九飛まででいずれも詰みとなります。

本局は期待にたがわぬ大熱戦となり、非常に見応えのある一局でした。
途中までは渡辺二冠の素晴らしい大局観で優位に進み、一時形勢が互角に縮まりましたが豊島棋聖の緩手から一気に抜け出した形になりました。
終盤に強い渡辺二冠であれば問題なく勝ち切れる局面でしたが、豊島棋聖の見えない力が働いたのか信じられない逆転となりました。
豊島棋聖にとっては非常に大きな勝利でした。
5番勝負で先勝できたことは次局以降、かなりリラックスした状態で臨むことができます。
また後手番で勝てたことも非常に大きく思います。
ただ、まだ1局目で棋聖戦は始まったばかり。
渡辺二冠もこのままで終わる方ではないので2局以降もハイレベルな戦いが予想されます。
注目の棋聖戦第2局は6月19日(水)です。
本局のような大熱戦を期待したいと思います。

以上、最後までお読みいただき有難うございました。


豊島の将棋実戦と研究 (マイナビ将棋BOOKS)[本/雑誌] (単行本・ムック) / 豊島将之/著

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会社での出世を目指し、毎日奔走しながら働く地方住まいのサラリーマン。仕事のことから趣味の将棋のことまで気まぐれに書いています。

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