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《棋聖戦》藤井七段 東八段に競り勝ち準決勝進出

6月11日(火)に第91期棋聖戦一次予選 ▲東和男八段vs△藤井聡太七段の対局が行われました。

戦型は東八段の先手で菊水矢倉対矢倉となりました。
第1図は後手の藤井七段が△5三角としたところ。

第1図以下の指し手
▲4六歩△同歩▲同角△4五歩▲5七角△2六角▲1五歩△同歩▲7五歩△同歩▲7四歩△8五桂▲同桂△同銀▲7三歩成△8一飛▲7五銀△5五歩(第2図)

第1図では先攻できる態勢を作っている後手が作戦勝ちとなっています。
先手が▲4六歩から歩交換した時に、△4五歩に代えて△3五角と角交換しておけば後手が指しやすくなっていました。
本譜は△2六角と1歩得しましたが、先手にとっては2筋の歩は切れていた方が▲2四歩の叩く手ができるので攻めやすくなりました。
今回のケースでは先手陣が左辺に偏っているので、後手は角交換しておけば敵陣に打ち込むスペースがたくさんあり、1歩得するよりも価値がありました。
先手は菊水矢倉の低い陣形を生かし、7筋から動いて▲7三歩成と「と金」を作ることに成功しました。
通常の矢倉囲いですと△7六桂や棒銀を生かす△8六歩など、上部からの攻めをまともに受けることになりますが、菊水矢倉の場合、玉が8九と低い位置にいるため、上部からの攻めに対して耐久性があります。
第2図の局面、まだ後手がリードしていますが、先手としては陣形の特徴を生かした上で攻め合う形を作れたので楽しみが出てきました。

第2図以下の指し手
▲1三歩△5六歩▲1四桂△3一玉▲5六金△1三香▲2八飛△7七歩▲同銀△7六歩▲6八銀△3五角(第3図)

▲1三歩は次に厳しい手がある訳ではないのですが、ゆっくりした展開になると▲1五香~▲1二歩成や▲1四桂~▲2二歩といった攻めがあり、また△1三香と歩を払うと▲2五桂~▲1三桂成の攻めが嫌味になります。
戦い方の基本として、形勢が優勢な場合は1本道の変化になるよう分かりやすい展開に持ち込めれば勝ちやすくなり、不利な場合は逆に複数の選択肢を相手に与え、局面を複雑化することで逆転を呼び込みやすくなります。
このタイミングで指された▲1三歩は局面を複雑化させる実戦的で上手い1手でした。
△5六歩に対して▲同金とする前に▲1四桂を先着したのも、▲1三歩からの継続手で実戦的でした。
後手は△1三香と手を戻しましたが、ここで手が戻るのであれば▲1三歩の時に△同香としておく方が優れました。
本譜の進行は3一玉と囲いの外に出された分、少し差が縮まりました。
作戦負けから少しずつ挽回し迎えた第3図、ここで先手に疑問手が出ました。

第3図以下の指し手
▲1五香△5七角成▲同金△5六歩▲6六金△1四香▲同香△7七桂▲9八玉△6九桂成▲6三と(第4図)

▲1五香が甘い1手。この後の応酬で一気に差をつけられました。
角交換後の△5六歩が厳しい1手。
▲同金は△3九角の飛・銀両取りがあるため▲6六金と逃げますが
△1四香と桂を入手してから△7七桂が厳しい追撃。
先手陣だけ終盤戦のような展開になり、非常に苦しくなりました。
戻って▲1五香では▲3五同角、もしくは ▲ 4四歩から激しく攻め合う順が勝りました。
変化の一例として ▲3五同角△同歩 ▲ 4四歩△同銀 ▲ 5二角△5三金 ▲ 6三と△5二金 ▲ 同と△1四香 ▲ 2四歩(変化図)。

形勢はまだ後手が良いのですが、本譜よりは逆転の余地がありました。
本譜の進行は後手に攻撃の手番が回ったことが非常に大きかったです。
先手は玉形が不安定なため受けに回る展開は避けなければならず、後手に攻められる前に攻める必要があったのです。
勝負所の局面でしたが、東八段の重厚な棋風が裏目に出ました。

第4図以下の指し手
△6八成桂▲同飛△5七歩成▲ 1八飛 △ 7七銀▲6四角 △ 4二銀▲2二歩 △ 1七歩▲2一歩成 △ 同玉(第5図)

△6八成桂▲同飛△5七歩成 と急所にと金ができ、先手は粘りが効かなくなりました。
ここで大勢が決しました。
△ 7七銀が俗手ながら厳しい1手。
後手陣は堅牢なので、ゆっくりでも確実な攻めを繋いでいけば自然に手勝ちが見込めます。
先手は端から攻めを試みますが △ 1七歩 が手筋の叩き。
▲同飛は飛車の横効きが消えるので泣く泣く ▲ 同桂としますが、後手陣を攻める手段が無くなりました。
第5図以下の指し手
▲1七桂△ 7八銀成▲1二香成△3一玉▲7八飛△8八歩まで 後手・藤井七段の勝ち。

「△8八歩」手筋の歩で先手投了となりました。
▲同飛は△7七歩成、▲同玉は△7七金▲同飛△同歩成▲同玉△7六歩 ▲ 同金△同銀 ▲ 同玉△6七角 以下即詰み。
後手陣に攻め込む手段もないため投了やむなしです。
本局は藤井七段が 序盤で奪ったリードを保ったまま押し切りました。
途中、形勢が接近しそうな場面もありましたが 終始落ち着いた指し回しで 大きなミスなく対処されていたのが印象的でした。
普通は少し慌てそうなところですが、さすがは高勝率を誇る百戦錬磨のプロ棋士ですね。
東八段も不利な形勢ながら局面を複雑化させる手をテクニックを駆使されており、実戦でも使える大変参考になる指し回しでした。
本局の結果、藤井七段は1次予選準決勝進出となりました。
次の相手は伊奈六段。 同日に 伊奈六段 との対局となりました。
その対局についても次の投稿に掲載したいと思います。

以上、最後までお読みいただき有難うございました。


藤井聡太の鬼手 〜デビューから平成30年度まで〜 [ 書籍編集部 ]

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habuparov
会社での出世を目指し、毎日奔走しながら働く地方住まいのサラリーマン。仕事のことから趣味の将棋のことまで気まぐれに書いています。

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