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《順位戦》稲葉八段 広瀬竜王を破り白星発進

6月14日(金)に第78期A級順位戦 1回戦 ▲広瀬章人竜王vs△稲葉陽八段の対局が行われました。

共に直近の成績が4勝6敗と本来の状態からほど遠く、復調を目指す上で是が非でも勝星を上げたい一戦は、広瀬竜王の先手で相掛かりの戦型となりました。
第1図は後手が△7四歩と突いたところ。
飛車の横利きが止まった瞬間を見計らって先手が動きます。

第1図以下の指し手
▲2四歩△同歩▲同飛△7五歩▲8五歩△5四飛▲2五飛△7六歩▲8六角△2三歩▲7五飛△7三銀▲7六飛△4二銀▲7七桂(第2図)

飛車の横利きが止まった瞬間に▲2四歩から動く手は相掛かりや横歩取りで頻出する揺さぶり。
△7五歩に▲8五歩も手筋で△同飛には▲3四飛と歩を取り、△7七角成には▲同桂とした手が飛車に当たるようにしています。
上記の変化を避けるため、後手は△5四飛として横利きを残します。
▲2五飛は7五歩を狙うと同時に▲2四歩の垂れ歩からの攻めも狙っています。そこで後手が指した△7六歩はこの戦型では覚えておきたい手で、▲2二角成には△同銀として7筋の歩を逃がしつつ▲2四歩の垂れ歩の攻めを緩和しています。
7六歩の拠点は見た目以上に大きく、玉の退路を塞ぐと同時に▲7七桂と攻め駒を増やす手も押さえる効果があります。
この歩が残った状態で戦いが始まるのは得策ではないので先手は▲7五飛と回り7六歩を取り除きます。
第2図から局面が大きく動きます。

第2図以下の指し手
△7四銀▲4五銀△7五歩▲同角△同銀▲同飛△7四歩▲7六飛△6四飛▲8四歩(第3図)

第2図では△7四飛と飛車をぶつける手や△7五歩▲同角△7四飛として次に△6四銀を狙う手が考えられましたが、△7四銀と指されました。かなり思い切った1手でした。
▲4五銀とされると飛車の逃げ場がなく決戦に入るので読み筋に少しでも綻びがあると一気に形勢が悪くなります。
本譜は▲4五銀に△7五歩として銀取りを防ぎつつ飛車取りで返します。
先手も逃げる訳にはいかないので▲同角から角銀交換に打って出ます。
一本道で角銀交換になりましたが歩切れや駒の働きの差でバランスが取れており形勢は拮抗しております。
しかし第3図の△8四歩が疑問手でした。
ここから後手が上手い手順でペースを握りました。
第3図以下の指し手
△3三桂!▲5六銀△3五歩▲同歩△2四飛(第4図)

△3三桂が見えにくい意表の1手。
一時的にですが角道を自分で止めるので指しにくいですが、第3図では十分成立しており後手がペースを握り返しました。
▲5六銀に対する△3五歩が△3三桂と連動した手順で後手は稼働範囲の狭かった飛車を上手く使うことができるようになりました。
戻って第3図の▲8四歩では▲5六銀と先に引いておくべきでした。
△3五歩▲同歩△2四飛には▲2五歩と受けることができますので後手は飛車の活用に苦労するところでした。

第4図以下の指し手
▲2七歩△2五桂▲4五桂△3七角▲6五銀△7三角成▲8三銀△6二金▲7四銀成△1九馬▲8三歩成△4一玉(第5図)

▲2七歩が疑問手で△4九角と打ち込まれると2筋突破が受からず後手優勢になっていました。
▲2八歩、もしくは▲2六歩△同飛▲2七銀△2四飛▲2六歩といった受け方で後手に2筋突破を許さない指し方が必要でした。
しかし、ここで後手も△2五桂と攻め方を誤ります。
▲4五桂の跳ね違いが手筋の1手で形勢が五分に戻りました。
後手は強手△3七角でなんとか持ちこたえます。
▲同金は△同桂成で次の△2七飛成が受けづらく後手良し。
▲6五銀は最善手で△7三角成に▲8三銀として後手に食い付くことができました。
後手は△6二金~△1九馬として受け流しますが、最後の△4一玉が危険な受け流し方で先手にチャンスが到来しました。

第5図以下の指し手
▲8六飛△5一香▲7三歩△3七桂成▲7二と△5二金▲8一飛成△3八成桂(第6図)

▲8六飛が悪手で先手は形勢を損ねました。
本譜の攻めは重く、後手の2筋突破の攻めの方が早くなりました。
▲8六飛では▲6三成銀△同金▲7二飛成としておけば先手の攻め合い勝ちが見込めました。
▲6三成銀の攻めがあるため、後手は△4一玉のところでは△4四歩としておく方が安全でした。
本譜の先手の手順は△4一玉の早逃げが生きる展開になり、後手が一歩抜け出した形になりました。
△3八成桂と金が取れ、後手の勝ちが見えてきました。

第6図以下の指し手
▲6二と△同金▲7二歩成△5二金▲7三と△5五馬▲6三と△4五馬▲6一竜△6三金▲同成銀△同馬▲同竜△2七飛成(第7図)

先手は▲6一と~▲7二歩成~▲6二と寄といった手順で攻めたいところですが、後手の△2七飛成~△2九竜の攻めの方が早く間に合わないため、本譜の手順で攻めの速度を上げようとします。
しかし、後手の△5五馬~△4五馬が上手い手順で先手は攻撃速度を上げることができませんでした。
▲6一竜に対して△6三金▲同成銀△同馬▲同竜 とあっさり清算したのも好判断でした。
守りの馬と金が消えましたが依然として後手陣は堅牢な上、先手の攻め駒が消え局面が分かりやすくなりました。
「終盤は駒の損得より速度」の格言通りで、後手は馬・金を捨てることで速度を上げ、逆に先手は第5図で▲6三成銀を見送ったことで速度が上がりませんでした。
この判断の差が明暗を分ける結果となりました。

第7図以下の指し手
▲7二竜△2八竜▲6六歩△3七成桂▲6七玉△7五歩まで後手・ 稲葉八段の勝ち

2二角がよく効いており先手は逃げることも受けることも難しく、稲葉八段の的確な攻めの前に間もなく投了となりました。

本局はねじり合いの中盤戦でしたが後手が△3三桂~△2四飛の指し回しが上手く、局面をリードすることができました。
その後、先手にチャンスが訪れ、昨期の絶好調時の広瀬竜王であればチャンスを物にされていたと思いましたが、本局ではチャンスを生かすことができませんでした。
この辺りは直近の対局不足が影響されたのかもしれません。
現在の将棋界は豊島三冠・渡辺二冠が二強の状態となっておりますが、本来は広瀬竜王もここに入る力を持たれていると思いますので、棋界を盛り上げるためにも早い復調を期待したいところです。
一方で稲葉八段も状態が悪そうでしたが本局の終盤戦は本来の戦い方だったと思います。
ギリギリまで相手の攻めを引き込み、力を溜めて一気に相手玉を寄せる、切れ味の鋭さが本局でも見られましたので復調が近いよに見受けらました。
期待の関西若手棋士ですのでタイトル奪取を期待したいです。

以上、最後までお読みいただき有難うございました。


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habuparov
会社での出世を目指し、毎日奔走しながら働く地方住まいのサラリーマン。仕事のことから趣味の将棋のことまで気まぐれに書いています。

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