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《王位戦》豊島王位 激戦を制し初防衛に王手

8月27日~28日に第60期王位戦七番勝負 第5局 ▲豊島将之王位vs△木村一基九段の対局が行われました。

勝った方がタイトルに王手をかける王位戦第5局。
大一番の勝負なので両者慎重な立ち上がりになると予想しておりましたが・・・
戦前の予想とは裏腹に1日目から局面が大きく動く一戦となりました。
大激戦となった、この大一番を振り返りたいと思います。

【1日目】
戦型は豊島王位の先手で角換わり腰掛け。
豊島王位が得意としている戦型で本シリーズでは初めて現れた戦型。
木村九段が意図的に避けられていたので、この戦型は出ないと思っていました。
まさか、この大一番で角換わり腰掛けを受けるとは・・・
ただ、ここで相手の得意戦法を叩くことができれば心を折ることができ、王位奪取に大きく近付くので心理面で揺さぶるという意味ではいい選択だったかもしれません。

局面は早いペースで角換わり腰掛銀の最新型に。

第1図以下の指し手
△5二玉▲7九玉△4四歩▲8八玉△4一飛▲5八金△3八角(第2図)

後手の待機策は現在最有力とされている待ち方。
この待機策を取られると先手は一筋縄ではいかないので、玉を入城させて攻撃態勢を整えます。
▲5八金が大胆な1手。
△3八角から馬を作られる手があるだけに勇気がいるところですが、この局面は過去に前例があり考慮時間から察するに入念な下調べがあったようですね。
局後の感想戦でも木村九段が事前に研究していた旨を話されており、ここは両者とも想定の範囲内ということでした。
果たして、どちらの研究が上を行くのか・・・

第2図以下の指し手
▲2六飛△4九角成▲4七銀△3九馬▲8三角△6三金▲7二角成△6二金▲8三馬△6三金▲8二馬△6二金(第3図)

後手に馬を作られましたが先手も馬を作ることができ形勢は互角。
途中、▲8三角に△6三銀や△6三玉とするのは▲7五歩△同歩▲5六角成となった時に後手陣のバランスが崩れるので後手としては本譜のようにバランスを崩さず対応したいところ。

第3図以下の指し手
▲3五歩△同歩▲4五歩△同歩▲7五歩△同歩▲4五桂△同銀▲7四歩△7六歩▲6八銀△7七歩成▲同銀△7二歩(第4図)

第3図の局面、▲8二馬で前例を離れました。
先手は▲8三馬からじっくり指す展開も考えられましたが、過激な攻めで後手陣に攻め込みました。
本譜の進行は桂馬を渡す攻めなので躊躇しそうなところですが、先手は迷わず駒損の攻めを敢行。
豊島王位はここまで1時間も使っていないので研究の範囲内ということですね( ̄ω ̄;)
ただ形勢は互角なので、木村九段もうまく対応できていたと思います。
気になるのが持ち時間の差。
木村九段はここまで3時間ほど消費しており、このペースでいくと1日目終了時点で持ち時間が大差になる可能性があるので出来るだけ差が開かないように指したいところです。

第4図以下の指し手
▲7三歩成△同歩▲7四歩△同歩▲6四馬△3四桂▲4六歩!(第5図)

先手は桂馬を取り返して▲7四歩~▲6四馬と馬を活用することができましたが、△3四桂が厳しい1手。
▲2七飛と引くのは△4六歩▲5六銀△4九馬といった要領で飛車を目標にしながら攻められ苦しくなります。
一見困ったようですが▲4六歩が素晴らしい切り返しでした。
△2六桂と飛車を取られる手が気になりますが、▲4五歩と取り返しておいて僅かながら先手有利。
この局面、後手陣が不安定な形をしているため▲7四馬・▲6五馬・▲4四桂といった手で陣形がかき乱されやすい形になっており多少の駒得では追いつけない局面になっています。

第5図以下の指し手
△6三歩▲7四馬△5四銀▲2七飛△4六桂(第6図)

△3六銀と出て激しく攻め合う順もありましたが、本譜は銀を引いて守備に重きを置く穏やかな手を選択。
83手目で豊島王位の封じ手となりました。

観戦しているほうも疲れそうな激しい将棋になりましたね。
1手でも誤れば取り返しのつかない状況となる展開にも関わらず80手以上進んだということは、互いにかなり深いところまで研究していたという事なので本局に賭ける両対局者の研究量の凄さが分かります。
最近のトレンドとはいえ、二日制のタイトル戦で1日目から激しい展開でこの手数・・・隔世の感がありますね。



【2日目】
封じ手は候補にも挙がっていた▲2四歩。
2日目も1日目同様に激しい展開へと入りました。
封じ手の局面から20手ほど進み、第7図に。

▲3四歩の叩きに△4四銀と逃げたところ。
ここからの数手で形勢に差が出ました。

第7図以下の指し手
▲5六銀△4六銀▲6八金△2二玉▲1五歩△同歩▲同香△同香▲1四金△1一香(第8図)

▲5六銀に△同銀と取らずに△4六銀と躱しましたが結果的には積極性に欠け、このあと先手の猛攻を浴びることになりました。
一旦▲6八金と引き締めるのが覚えておきたい1手。
上級者になればなるほど戦いの最中に陣形を引き締めるテクニックが頻出します。
この1手によって浮き駒がなくなり、玉の横っ腹も閉じれたので大駒を切る大技が掛けやすくなりました。
▲1五歩~▲同香~▲1四金が恐ろしい狙いを秘めた攻めでした。
後手は△2三香と玉頭を守っていれば、まだまだ難解な戦いとなっておりましたが、本譜は△1一香。
この手が敗着で必殺の寄せが炸裂しました。

第8図以下の指し手
▲2三歩△同金▲2四金△同金▲同飛△2三歩▲5五銀!(第9図)

▲2四同飛△2三歩に▲5五銀の鬼手が炸裂しました。
この手に対して①△同銀直と取るのは▲3三歩成△同銀▲2三馬△3一玉▲3二金で詰み。
②△2四歩と飛車を取るのは▲3三歩成△同銀▲2三金△3一玉▲5四銀で寄り筋。
▲5五銀で6七馬の利きが2三まで通ったのが大きく後手はどう応じても寄り筋に入りました。

第9図以下の指し手
△4五歩▲4四銀△同飛▲3一銀△同玉▲3三歩成△同桂▲4四飛△4三銀打▲6一飛まで先手・豊島王位の勝ち

後手は△4五歩と馬筋を遮断しましたが銀を取ってからの▲3一銀が決め手。
基本通り玉を下段に落としてから▲3三歩成で詰めろ飛車取りがかかり後手は万事休す。
投了図、4一に合駒をするくらいですが▲2四歩とされ△4四銀は▲2三歩成で1手1手の寄り。
▲2四歩に△同歩は▲同飛と飛車を逃げられ、先手陣が鉄壁で攻防共に見込みがないため投了やむなしとなります。

本局は終始先手が指しやすく、先手が一方的に攻め倒した将棋となりましたが、それまではどちらが勝つか分からない非常にハイレベルな将棋でした。
豊島王位が盤石の指し回しをしたため木村九段はノーチャンスでしたが、相手がタイトルホルダーでなければ十分逆転できていたと思います。

局後、木村九段は「やってみたかった作戦なのですが、空振ってしまった感じがしますね。結局、角(3九馬)とか桂(3八成桂)が残ってしまったので、失敗したような気もします。苦しい時間が多かったように思います。」という感想を話されておりました。
形勢はほぼ互角で、それほど大きな差を付けられていなかったと思いますが、先手の差し回しが上手く後手が勝ちにくい形にされたように感じました。
後手は陣形のまとめ方、3九馬と3八成桂の活用と解決させなければいけない課題が多かったのに対し、先手は陣形を固めて1回でも食い付くことができれば勝てる明快な将棋だったので人間同士の対局では先手が勝つ可能性が高かったと思います。
リードを奪ってから手堅い指し回しで差を広げる豊島王位らしい勝ち方でしたね。
本局の結果、豊島王位が防衛に王手をかけました。
注目の第6局は9月9日(月)~10日(火)。
豊島王位vs木村九段は互いの持ち味が噛み合っていて、相性は悪くないと思うので木村九段が逆王手をかける可能性も十分あると思います。
豊島王位の初防衛が見たいのですが、木村九段の初戴冠も見てみたい・・・ (;´Д`)
ハイレベルな両者の戦いを堪能したいと思います。

以上、最後までお読みいただき有難うございました。

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habuparov
会社での出世を目指し、毎日奔走しながら働く地方住まいのサラリーマン。仕事のことから趣味の将棋のことまで気まぐれに書いています。

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