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三浦九段vs豊島二冠戦で現れた7八銀型ひねり飛車について

羽生パロフです。

将棋日本シリーズ JTプロ公式戦 二回戦 ▲三浦弘行九段vs△豊島将之二冠戦で懐かしい形が現れました。

おそらく、ひねり飛車マニアの人でなければ知らない『7八銀型ひねり飛車』。

私の曖昧な記憶になりますが、30年くらい前に数局指されたくらいで消滅した戦型だったと思います。
しかもマイナーな対局で新聞や将棋世界などに掲載されず一度もスポットライトが当たること無く、ひっそりと消滅したと記憶しています。

最近、大橋五段がひねり飛車の書籍を出されていて、もしかしたら今回記載する変化についても書かれているかもしれません。
近くの書店でこの本を買おうと思ったのですが、あいにく見つかりませんでした(;´Д`)


なぜ、『7八銀型ひねり飛車』が指されなくなったか・・・
まずはその前に『7八銀型ひねり飛車』の意図を説明したいと思います。
通常のひねり飛車は7八金型です。

普通の駒組みですと上図のような進行になりますが、ひねり飛車側は薄い美濃囲いなので、ここから▲6八金~▲5八金左といった手順で駒を寄せる展開になります。
これも悪くないので一局の将棋なのですが、先手は7八金が遊び駒になりやすく△9三桂や△2四角といった手から先攻されると薄い陣形での戦いを余儀なくされます。
先手はどこかで手得して駒組みを進め、強い戦いができるようにならないのか?・・・ということで現れたのが『7八銀型ひねり飛車』!
鋭い方は気付かれたと思いますが、▲7八金と上がっていないので1手で▲5八金左とすることができます( *• ̀ω•́ )b
通常の▲7八金~▲6八金~▲5八金左に比べて2手得できるのです。
また後手の対応によっては▲7八銀・▲6九金の低い陣形を生かして飛車交換から乱戦に持ち込むこともできます。

上記の理由を見ると『7八銀型ひねり飛車』は優秀で良い事尽くしですね。

ここから冒頭に記載した消滅した理由を書きたいと思います。
『7八銀型ひねり飛車』は駒組みに入る前の段階で重大な欠陥を抱えていたのです・・・

上図は三浦九段vs豊島二冠戦の25手目▲7五歩の局面。
豊島二冠はここで△9四歩とされたのですが、この手は緩手。
△9四歩に代えて△8八歩と指せば、先手は痺れていました。
次に△8九歩成とされると必敗形なので先手は何かしなかればいけませんが、この形は先手に有効な受けがないのです。
▲8五歩としても△8九歩成とされ▲同銀は△7七角成で必敗、▲8五歩に代えて▲7九金としても△8九歩成で▲同銀は△7七角成なので▲同金とするよりありませんが、それでも△7七角成で▲同銀△8九飛成で先手崩壊。
△8八歩に▲8六飛とぶつけても△同飛▲同角△8九歩成▲同銀△8七飛▲8八飛△7七飛成▲同角△同角成で先手必敗。
8九歩成を甘受して辛抱する展開もありますが、と金を作られた上に香車も取られるので、相当勝ちにくい将棋になります。

上記の理由から7八銀型は超急戦に弱いため最短距離で攻撃されると崩壊することが分かり、指されなくなったのです。

私の推測ですが、三浦九段はこの変化を知っていたと思います。
私が奨励会に在籍していた時、棋譜並べをしている中で三浦九段がひねり飛車をよく指されているのを見ており、ひねり飛車について精通されていました。
その方が『7八銀型ひねり飛車』の欠陥を知らなかったとは考えづらく、仮に知らなかったとしても『7八銀型ひねり飛車』を指すにあたり、なぜこの戦法が指されなくなったのかを考えると思います。

悪くなる変化を知っていて、なぜ『7八銀型ひねり飛車』を指したのか・・・私は2つの要因が重なったため、三浦九段が今回『7八銀型ひねり飛車』を指したのではないかと思っています。

※私の勝手な想像です(´・ω・`)

1つ目は博識の豊島二冠でも知らない変化であったこと。
私は豊島二冠と奨励会の在籍期間が重なっていたのですが、その時は横歩取り8五飛戦法の最盛期で今のように相掛かり系統の将棋になることは皆無でした。
力戦模様の展開から『ひねり飛車』になることはあっても今回のような定跡型の『ひねり飛車』はあまり経験がなかったと思います。
また、冒頭に記載した通り、スポットライトに当たること無くひっそりと消えた戦法なので、さすがの豊島二冠でも『7八銀型ひねり飛車』の意図・対策などは知らなかったハズです。
2つ目の要因は、今回の対局が持ち時間10分(他に各5分の考慮時間あり)の超短期戦の勝負だったこと。
おそらく嗅覚鋭い豊島二冠であれば5手目の▲9六歩の段階で何かあると察知し、▲7八銀の時に『7八銀型ひねり飛車』の意図を探っていたと思います。
たぶん持ち時間が3時間以上の将棋であれば、考える時間は十分ありますので▲7五歩の局面(上図)で確実に△8八歩を指していたハズです。
手筋としては、それほど難しくないので、時間があれば確実に優勢に導く手順を読み切れます。
ただ今回のような持ち時間が少ない対局の場合は、全ての変化を読み切ることは困難なので人間心理としては序盤早々の激しい戦いは避けて無難な変化を選択する・・・といった考えが三浦九段にあったと推察されます。
※私の勝手な想像です(´・ω・`)

あまり興味がないかと思いますが私が『7八銀型ひねり飛車』を知った経緯を書いておきます。
奨励会にいたとき、定跡型を指さずに力戦型を好んで指すAさんがいました。
Aさんは横歩取りに対しては無理矢理ひねり飛車にされることもあり、私はその対策でひねり飛車の戦型も棋譜並べしたり本を読み色々な変化を頭に叩き込んでいました。
ある日、私が師匠の家にお邪魔する機会があったのですが、たまたま机の上に数十局の棋譜が置かれていました。
(当時、プロ棋士は棋譜郵送の申し込みしておくと、前月の全対局の棋譜が郵送されるようになっていました。
IT化が進んだ今は電子媒体になっているのかな?)
そこで、たまたま目に入ったのが『7八銀型ひねり飛車』の棋譜でした。
初めて『7八銀型ひねり飛車』を見た時は、「すごい画期的な新手だ!」と感動しました。
すぐに潰される変化を知って愕然としましたが・・・
この時、奇をてらう将棋が多いAさんがもしかしたら自分の対局で指してくるかもしれないと思い、入念に変化を覚えていました。
このような経緯で偶然この戦法を知ることができたのです。一度も使うことはありませんでしたが・・・(´;ω;`)

当時は局面検索を行えるPC環境がなく、紙媒体の棋譜を戦法毎にファイリングするくらいしか方法がなかったので、私が見つけた『7八銀型ひねり飛車』の棋譜は10局もありませんでした。
しかも何年か前まで遡って数局だけでしたので、おそらくですが一部のマニアを除き30代以下の方でこの戦法と衰退した理由を知っている人は少ないと思います。

一生使うことはないと思っていましたが、今は横歩取りがあまり指されなくなり代わりに角換わり腰掛けや相掛かりが指されるようになってきたので、もしかしたら今回のように『ひねり飛車』を見る機会が多くなるかもしれません。
アマチュア棋戦は短時間の対局がほとんどなので情報量が大きくものを言います。
ひねり飛車は一瞬で必勝・必敗になる変化が多くあり、事前研究が必須の戦型なので今回の投稿が少しでも参考になれば幸いです。

以上、最後までお読みいただき有難うございました。

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habuparov
会社での出世を目指し、毎日奔走しながら働く地方住まいのサラリーマン。仕事のことから趣味の将棋のことまで気まぐれに書いています。

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